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ドラマ『ながらえば』

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息子（中野誠也）の左遷で名古屋から富山へ引っ越しを余儀なくされた隆吉（笠智衆）。本来なら妻のモト（堀越節子）ともども移り住むはずであったが、彼女は入院中で離ればなれを余儀なくされる。

富山についた隆吉は、ふと不安に襲われ、家族の反対を押し切って一人名古屋行きの列車に飛び乗るのだが…。

評価：

「老い3部作」の1作で社会派ドラマではあるのですが、壮大なラブストーリーともいえます。そして、ラストは思わず泣いてしまいました。素晴らしい傑作です。

骨子としては、老夫婦の話であり、老人は息子の仕事の都合で、病に倒れた妻を名古屋に残して、富山に移住せざるを得なくなります。

しかし、妻の病状が心配になり、少ないお金を握りしめ、富山の家を飛び出し、1人名古屋に向かうことに。お金が足りなかったり列車の乗り方がわからなかったりでなかなか名古屋に辿りつけず、一方妻の病状は悪化していくばかり。というように話は進行していきます。

仕事の都合や老いによる健康不良の理由で、長年連れ添って来た夫婦が離れ離れになる…。このような経験は将来、私達にも十分にありえる話であるといえるでしょう。

このドラマでは最後、主人公は名古屋に無事到着し、再会することが出来るのですが、このまま生き別れになることも十分考えられることです。しかも、何十年後かに起こり得る出来事です。

この話はとても心に刺さって来ます。山田太一の問題提起は素晴らしいです。

とてもピュアなラブストーリーであり、ラブストーリーは何も若い男女の物語だけではなく、長年連れ添った老夫婦の物語であっても、いかむしろこちらの方が純粋で、心を震わせる物語を紡いでくれる可能性を秘めていると気付かせてくれます。

商業的な視点でドラマを作るのではなく、心に訴えかけるドラマ。とても素敵であり、このようなタイプのドラマが世間に受け入れられる土壌が出来るよう、私達も成熟する必要があるのかもしれません。

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鑑賞日：2015年10月