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ドラマ『冬構え』

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年老いた岡田圭作（笠智衆）は、旅行先の鳴子温泉旅館でたまたま担当となった仲居（岸本加代子）に5万円ものチップを渡します。仲居は岡田のことをお金持ちの社長なのではなかと推測します。

仲居は恋人であり、同じ旅館で働く板前（金田賢一）と二人の店を構える夢を持っていたのですが、喧嘩して板場を飛び出した恋人と一緒に、岡田を追って八戸へ。岡田に頼んで、お店を作るための資金を工面してもらおうと考えたのです。

八戸は、板前の実家でもありました。岡田は仲居の願望通りにお金を工面してくれたのですが、そんな岡田の様子を不審に思った恋人の板前が岡田を追い、岡田を実家に伴い…。

評価：

NHKにて放送された山田太一脚本による「老い」3部作の1つ。東北を舞台にして、自然の素晴らしい情景を拝見に話が展開していきます。ロードムービー的な要素も。

山田太一のストーリー作りに最初からグイグイと引き込まれていきます。1人で旅館に訪れた老人の客。1泊1万5千円の宿泊代なのに、仲居さんにチップを合計5万円も渡してしまう…。一体この老人は何者なんだろうと興味が尽きません。日常からドラマを引き出していく方法は本当にうまいなと感心してしまいます。

キャラの描き方も良く、特に仲居さんとその恋人の板前の組み合わせは最高。お金に目がないイマドキの若者である仲居さんと、無骨で自分の腕だけでやっていこうとする板前。仲居さんが板前に惚れるのも納得するキャラの作り込みです。

中盤、主人公岡田の同僚で病床で病と闘っている病人を藤原釜足が演じており、迫真の演技であると感じました。気になり、調べてみるとこの方は『7人の侍』で百姓の役をやられた方（黒澤監督に怒られるのを無視して、独自の解釈で演技し、公開後に黒澤さんが納得したという逸話があります）だそうで、このドラマにも出ている沢村貞子さんは元妻なのだとか。

そして、このドラマが遺作であり、ご出演後まもなく亡くなられたそうです。ドラマで死について語っていますが、魂から出た言葉のような気がします。

本作は「死」について考えざるを得ない話になっています。このドラマが放送された1985年は65歳以上の高齢者人口が全体の10％を超えた年であり、この時から高齢化問題は取り上げられ始めているということがわかります。

そして、2014年はその割合は27.5％。ますます問題が深刻化される中、山田太一さんのようなスキルを持ち、社会派ドラマを書ける脚本家がいないことは大きな損失であるといえるのではないでしょうか。

現在、放映されている内容の薄いドラマを観るくらいなら、昔のドラマを観た方が良いと感じてしまう…。テレビ離れが進む理由の1つはこんな所にもあるんじゃないかと思うのです。

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鑑賞日：2015年10月