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邦画『拝啓天皇陛下様』

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昭和6年1月10日、大学を卒業し立ての作家志望、棟本博（長門裕之）は岡山の歩兵第10連隊に入隊。そこで同じ中隊に配属された不思議な男性、山田正助（渥美清）と出会う。

山田は生まれた時、既に父親はいず、3歳で母親に死なれ天涯孤独。読み書きもまともに出来ず、たいした仕事にもありつけず、不幸を絵に描いた様な境遇。しかしながら、いつも大きな顔に満面の笑顔でニコニコ笑う飄々とした憎めない男。

棟本、通称ムネさん と、山田、通称ヤマショーの20年に及ぶ友情が始まる…。

評価：

『男はつらいよ』1作目が登場したのが1969年。その6年前の作品になります。渥美清と藤山寛美という組み合わせはとても貴重。しかも監督は黒澤明から「日本一の助監督」と評され、『砂の器』などの名作を作った野村芳太郎ときています。

日中戦争、太平洋戦争をまたいだムネさんとヤマショーの友情を描いた骨太の作品。構成が『フォレストガンプ』に似ていました。

渥美清が演じるおおらかなキャラクターと理知的な演技の長門裕之さんとの組み合わせが良いです。作中、ヤマショーは天皇陛下を拝見する機会を得て、以来、天皇陛下に激しく思いを寄せることになります。戦争中も「天皇陛下のため」と突進するヤマショー。

ラストはヤマショーがいよいよ結婚するという直前で事故死してしまうという悲しいエピソードで終わるのですが、その時も天皇陛下を慕った発言をしており、その姿が物悲しいです。

戦争で人生がボロボロになっても、それでも天皇を崇拝する日本国民。そんな人としての悲しい性（さが）がメッセージとして伝わりました。心に爪痕を残す一本。

渥美清と藤山寛美はお互いとても尊敬していたというエピソードを聞いたことがありますが、この2人の軽妙な掛け合いを観るだけでも十分価値があります。

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鑑賞日：2015年9月